ケアマネなんて儲からん

「現役並み」という言葉を聞くたびにブルーになる低所得のケアマネジャーが日々の苦悩?をつづるブログです

法律と省令と通達と

某ケアマネのためのSNSで、<提供票をサービス事業者に交付する義務はあるか>との命題が提示されておりました。


これについて、やれ「法令」だ、やれ「通達」だ、と色んな言葉が飛び交っておりますが、


<義務があるか>との問いかけに対しては、
かならず<法令の根拠>がなければなりません。


なぜかというと、国民の権利を制限し、義務を課すことができるのは、
国の最高法規たる憲法と、国権の最高機関たる国会が定めた法律しかないからです。


それ以外はダメです。政令も省令も、まして通達なんて論外です。


国民に何かさせるときは、国民自身が選んだ代表者が作った法律によらなければダメ。


これが近代立憲主義、民主主義の大原則です。


ゆえに、<提供票をサービス事業者に交付する義務があるか>との命題に対しても、
その根拠は法律になければなりません。



しかし、実際問題として、いちいち法律で細かいことまで決めるのは大変だし、
細かいことまで決めすぎてしまうと変更するにも法律変更が必要になって現実的ではありません。


そこで、法律では大枠を定めて、あとの細かいことは担当省庁に決めてもらう。


そうして制定されるのが省令です。
法律と省令を足して、「法令」。


これがいわゆる、「法令遵守」の「法令」です。(実際には他に「政令」「庁令」がありますが)


先ほどは政令や省令で義務を定めることはできない、と書きましたが、「法律の委任があれば」「法律の範囲内で」、法律を補足することはできるわけです。

法律がないのに政令や省令で義務を制限すること。これは絶対にダメです。
 


介護保険制度では、法律が「介護保険法」。省令が「介護保険法施行規則」「介護保険法施行令」。
そして、いわゆる「運営基準」や「算定基準」も省令の一つです。



ですので、介護保険法令に基づいて、という場合は、介護保険法はもとより、
運営基準や算定基準に従って業務を行う必要があるわけですが、


実際にはそれだけでもまだ足りません。


例えば訪問介護サービスについて、介護保険法や運営基準などでは、「入浴、排せつ、食事の介護その他の生活全般にわたる援助」と書かれていますが、
これだけだと漠然としており、しかも「その他って何」とのツッコミが入ること間違いありません。



そこで登場するのが「通達」です。



訪問介護でいえば、かの有名な「老計第10号」がこれに当たります。



が、しかし。これでもまだ足りません。


老計第10号には「ベッドメイク」が含まれていないけれども、生活援助でベッドメイクしてもいいの?
ふとん干しはどうなのぉぉぉぉ~~~~~



との魂の叫びに対して答えてくれるのが、「Q&A」であったり「事務連絡」であったりします。
これも一つの「通達」です。



んじゃ、これ、誰が考えているのよ、と申しますと、介護保険がらみでいえば、<厚生労働省の職員>です。



発表するのは、「課長」だったり「室長」だったりです。「課長会議」発なんてのもあります。



そしたら、それにはやっぱり従わなくちゃいけないんじゃないの?と思うところですが、
課長とか室長とか、どんだけ偉いんだよ、と。




一般の会社だったらどうでしょう。


一番偉いのは社長。次が部長。その次が課長。その下に係長・室長。
その下に主任がいて、最後が平社員…といったところかと思われますが、


その組織で課長の位置付けってどれほどでしょう。
課長なら確かに「上のほう」ではありますが、もっと上がいるわけですな。
室長だと真ん中くらいですかね。


厚労省であれば、課長の上に部長がいて、局長がいて、事務次官がいて、副大臣がいて、さらに上に厚生労働大臣がいる。




国の課長になれるなんてスゲーとは思いますが、まあ、その程度なわけですよ。
まして室長。




どんだけ~~~




と叫びたくなっちゃいませんか?




通達は、法令の解釈の一つにすぎず、実際の運用をスムーズに進めるために
省庁の中の人が一方的に定めたもの。




ゆえに、唯々諾々と従わなければならないものでは当然ないわけです。





おかしいと思えば声を上げていい。
「解釈」には「解釈」で立ち向かっていいのです。





ですので、「こういう場合にどう扱われているのかな」と調べてみて、
「通達はこうなっている」というのであれば、それでよいし、



通達に納得がいかないなら<根拠を問い合わせても良い>わけです。



そして、その根拠に納得がいかないなら、こちらの考えを示し、
「貴見のとおり」との回答を引き出せたらしめたもの。



一人で立ち向かえないなら、業界団体等を利用して手続きの方法の変更を迫ってもいい。
手続き面に関して不服があるなら、行政不服審査法に基づく不服申し立てをしてもいいでしょう。
(面倒なので実際はやらないですけど)




それゆえ、冒頭の命題に対しても、根拠を法令に求めるのは当たり前のことであって、
その解釈の一つを示したにすぎない通達に絶対的な力はありません。




「わたしはAについて○○と考える!!」
「それはおかしい!みんな△△で運用している!現にそういう通達もある!!」
「だから何だ!そんなの知るか!法令のこの文言からすれば、△△となるのはおかしい!!」
「なにおう!役所がそう言ってるんだから、それに従わないでどうする!」
「黙れ、役所の犬め!わたしは法律論を語っているのだ!根拠を示せ!!」
「うるさい!ひねくれもの!みんなに嫌われても知らないぞ!」




てのは、まあ、オーバーですけれども、つまり、そういうことかと。




なんか、すごく長くなってしまいましたが、


いたずらに通達を信じず、自分の頭で考え、解釈し、
疑義があればたとえ保険者が相手でも納得できるまで意見を交わしあい、



<互いに最良の解決策を見つけていく>



そういった対等の立場でのやりとりも、わたくしは大切な気がいたします。