ケアマネなんて儲からん

「現役並み」という言葉を聞くたびにブルーになる低所得のケアマネジャーが日々の苦悩?をつづるブログです

介護保険の制度設計を考える

超高齢化社会の到来とともに、ますます報酬減が目論まれる介護保険制度。
そもそもその制度は、どのような趣旨で設計されたものなのでしょうか。


ものすごくうがった見方で書いてみました。
ぶっちゃけ論ですので、読みぐるしい点があるかと思いますがご容赦ください。


まずは<保険者の意向>。
これは二つの視点がありそうです。


一つ目は「医療費の削減」
イ)お年寄りが元気でいれば医療費を削減できる
ロ)おむつ交換などを介護職にやらせれば看護師の仕事を減らせる


二つ目は「自立支援の視点」
イ)怠けてないで元気でいろ。きりきり動け。国家に迷惑をかけるな
ロ)寝たきりになったら仕方ない。みんなで面倒みますよ。人間らしくね。


歯に衣着せぬ言い方をすればこんな感じかと。


この2つの視点の、(イ)は、いずれも要支援、(ロ)は要介護、と分類できます。
しかし、要介護には幅があり、要介護1~2は身体介護の必要性が少ないのが現状です。訪問介護ではサービス利用があるとしても生活援助が中心となっており、要介護1~2の方はデイサービスや福祉用具の利用が中心となっている気がします。


そこで、要介護1・2を地域に移行しようとする流れが出てきています。
要支援1・2は既に地域に移行されていますので、いわゆる「軽度」の要介護者が介護保険から地域に移管されるのは、ある意味やむを得ない、ともいえます。



しかし、介護保険には、<抜け落ちている現実>があります。


それは、


・人は老いる
・治らない病気がある


ということです。


現行の介護保険制度は「自立」を目指したもので、「残存能力」を最大限活用して「人間らしい生活」を続けることを目標にしています。
そこには、「改善」「維持」という視点が大きく作用します。


ところが、がん末期、進行性の難病にり患してしまった方は、今後ADLが低下していくことが明らかな方々です。
そのような方々に、「改善」「維持」を目標とすることは妥当なのでしょうか。


がん末期、進行性の難病については、介護保険制度から切り離すべきではないでしょうか。
これらについて、訪問看護は医療保険対応となっており、他のサービスも医療保険とするのが妥当なのではないでしょうか。



問題は、こういった声を、どう制度設計者(国)に届けていくかです。



ここに、ケアマネ業界の残念な現実があります。



<現場は何をしたいのか>



ケアマネジャーは、一体何がしたいのか。
したいことがあるのなら、その声を届ける必要がある。


そして、国からの信頼を勝ち得ていく必要がある。



現状はどうか。



ただ、国や保険者の言いなりになっていないか。



制度の一員として、国と「共に制度を作っていく」という意識が必要です。
そのためには、「営業」として、国に対して「プレゼン」をしていく必要があります。


例えば要介護1・2を地方に移管するなら、介護保険部会において、ただ「ケアマネが汚れ役を引き受けます!」とのたまうのではなく、



「その一環をケアマネが担います。そのためには○○の予算を付けていただきたい。この費用は、△△から□□をすれば賄うことができ、かつ財政削減につながる」



くらいのことを言う必要があります。


国側の代表者、官僚の皆様は頭の出来が違います。
その頭の良い皆様が考えた制度設計に異を唱えるなら、要求をかなえようとするなら、
その次元の違う頭の良さを納得させるだけのプレゼンをしなければなりません。


頭の良い人間は、頭の良い人間の話を聞く。面白いと思えば話を聞く。
それができる代表者を送り込まなければならないのですが、



残念ながら今のところ、この業界の上の方にいる方々は、ただ「ケアマネの地位向上」だけをうたい、「地位向上のための無料奉仕」だけを提言しているに過ぎない気がします。



最初に無料にしてしまうと後が困るのですがね~

ケアマネジャーの顧客は誰か

業界のSNSに「ケアマネの顧客は誰か」という投稿があり、それを読んでちょっとしたひらめきがありましたので、備忘録的に。


ケアマネの「顧客」を単純に考えれば、「利用者」であることは間違いないと思います。
しかし、介護保険制度は「介護保険料」「税金」によって支えられておりますので、顧客を「保険者」「納税者」と考える視点も必要な気がします。


つまり、通常のサービス業では、「客」はサービス料金の10割を直接「サービス提供者」に支払います。
1対1の関係です。


しかし、介護保険に基づく介護サービス業では、「利用者」はサービス料金の一定額(1割~3割)しか直接「サービス提供者」に支払いません。
他の誰かが残りの分を支払っている以上、1対1の関係ではないわけです。


そうしますと、必然的にその「誰か」の存在を無視して業務を行うことはできなくなります。


いわば「スポンサー」のような位置づけでしょうか。


1割ないし3割を支払う利用者と、7割ないし9割を支払うスポンサーであれば、どちらをより大切にしなければならないかは一目瞭然。


それゆえ、我々介護保険サービスに携わる者は、「保険者」や「納税者」の意向を無視して仕事をするわけにはいきません。


今朝のミーティングでも、訪問介護の責任者から「利用者がヘルパーに対する不満ばかりを口にして、自らは動こうとしない。『お金を払っているのだから、やってもらって当然』『わたしは保険料を○○円払っているのよ』と、制度を理解しようとしない」という報告がありましたが、
こういった利用者に対しては、1対1ではない「誰か」について丁寧に説明を重ねていく必要があります。


介護保険制度は、お手伝いさんを自由に使える制度ではないのだ、と。
介護保険制度は、他の大勢によって支えられている制度なのだ、と。
その人たちのことまで考えて大事に利用し、守っていかなければならない制度なのだ、と。


それを伝えるのは至難の業ですが、伝えることを怠ってはならないのだと、改めて思う次第です。


制度に携わるケアマネジャーも介護職も、そのことを肝に銘じて行動しなければならない。


とはいえ、スポンサー(国や保険者)の言いなりになっていれば良いかと言われれば、もちろんそんなことはありません。
利用者も1割ないし3割の利用料金を支払っていると同時に保険者の一員であり、納税者です。


スポンサーの意向に沿いつつ、利用者のニーズを最大限叶える努力をしていくことは、サービス事業者の責務と考えます。


国や保険者の意向(法や運営基準、実地指導等)に従いつつ、それに抵触しない範囲で最大限のサービスを提供する。


忘れてはならない視点だ、と改めて思った次第です。

タメ口で信頼関係は築けるか

久々の投稿です。


なぜか介護職の間では、「利用者にタメ口(ためぐち)はOKか?」という疑問が提示されることがよくあります。


それに対しては、


・ビジネスなのだから敬語が当然
・敬語が基本だが、くだけた表現があってもいい
・懐に飛び込むには敬語じゃなくてもよい場合がある
・タメ口のほうがフレンドリーになれる


おおむねこのような意見が出ます。


わたくし個人的には、「タメ口」は理解不能なのですが、
「親密になれる」「信頼関係を築ける」という方は少なからずいらっしゃるようです。


が、しかし。


「親密」になる必要はあるのでしょうか。
そもそも親密とはなんでしょうか。


お客様=利用者さんとは一定の緊張関係があってしかるべきだと思うのです。


・ビジネスとして割り切る
・ビジネスとしてサービスを提供する、


そういった一線を引いておかないと、なれ合い、やりすぎにつながり、
人間関係のこじれ、虐待、支配と被支配といったマイナスの関係につながるような気がします。


「土日にも電話が来て困る」
「なんでも頼まれる」
「ケアマネはどこまで関与すれば…」


なんて悩みを抱えている人は、そもそも「入り込み過ぎている」人なのではないでしょうか。


一定の線を引いて、ビジネスとして、専門職として向き合っている人は、
「専門職への信頼」を勝ち得ることができるのではないでしょうか。


信頼関係とは、利用者が相談援助の専門職としてケアマネジャーを尊敬し、ケアマネジャーは利用者を個人として尊敬すること。


そういった関係が築けていれば、「この利用者はわがまま」だとか「理不尽な要求をされる」だとかいった思いは少なくなるでしょうし、
「あのケアマネはわたしのことをバカにしている」とか「何も言うことを聞いてくれない」とかいったクレームも少なくなるのではないでしょうか。



そういった関係を、「タメ口」で築けるのでしょうか。



わたくしは無理だと思います。
少なくとも、タメ口を聞いてくる相手をわたくしは「プロ」として尊敬しません。
また、タメ口をきいてくる相手で「尊敬できる相手」に巡り合ったことがありません。



炎上覚悟で申し上げれば、所詮、ビジネスでタメ口を聞く人などその程度です。



「できる人間」は、言葉遣いもきちんとしているものなのではないでしょうか。



とはいえ、どれだけ口を酸っぱくしても我が事業所にも利用者にフレンドリーな口を聞くスタッフは尽きないわけで、
それを嫌だと思わない利用者さんもいる以上、個々人の問題なのかな、とも思いますが、




まあ、「丁寧語でクレームを受けたことはないが、タメ口でクレームを受けたことは多々ある」ということを考えれば、




それだけでビジネスでは敬語、という結論になるような気もいたします。


タメ口が当たり前のようなお店があったりもしますけどね~。
わたくしは、そういうお店は嫌いです。


選べる立場にあるなら、そんな店は行かなければいいだけですが、介護サービスを利用する利用者さんは果たしてそういう立場にあるのかどうか。


そういった視線も大切かもしれませんね。