ケアマネなんて儲からん

「現役並み」という言葉を聞くたびにブルーになる低所得のケアマネジャーが日々の苦悩?をつづるブログです

ただ働きその2 ~むしろすべてが無報酬

厚労省の老健局長が、「介護保険の見直し作業に入る」ことを明言したとのこと。

 
その中で、ケアプランの作成料について自己負担を、との話もあったようですが、これを読んでハテ?と思いましたので、久しぶりの投稿です。
 
というのも、ケアマネジャーの報酬は「給付管理費」という、給付管理(どの事業所がどのくらいサービスを利用したかのまとめ)業務についての報酬しかなく、「ケアプランの作成料」なんてものは存在しないからです。
 
そう思ったら、自分自身での間違いにも気が付きました。

以前から常々、なぜケアマネは「タダ働きが多いのか」と疑問に思ってきましたが、そうではなく、よくよく考えてみたら、ケアマネ業務のほとんどは「無報酬」でした。
タダ働きが多いのではなく、ほぼすべて。


そう書いてしまうと首をかしげる方もいらっしゃるかもしれませんが、以前も「ただ働きその1」というタイトルで投稿したように、例えば要介護認定の申請代行は無報酬です。
https://ligon.muragon.com/entry/3.html


その記事と重複になりますが、要介護認定の申請代行について、介護業界に入ったばかりの頃、「え?タダなの?」と口にして、まるで守銭奴のような目で見られたことがあります。
要介護認定の申請代行は、居宅介護支援事業所や地域包括が業務として行うことができますが、それよりなにより、介護保険は公的な社会保険なので、代行申請できるのは社会保険労務士さんです。
社会保険労務士法の例外として介護保険法に基づいてケアマネは申請代行できるわけです。


そうしましたら、一般常識として、社会保険労務士さんに「タダ(無料)で」申請代行してもらおう、と考える人はいないはずです。


ところがケアマネにはタダで頼む。頼むほうも頼まれるほうもタダで良いと思っている。
なぜか。なぜなのか。
「ケアマネさんに頼むと無料です」とホームページで明言している市町村まであります。


この業界にいて10数年になりましたが、未だにこの疑問は解けません。
そしてまた、自分と同じように、「無料なんておかしい」と思っている人に出会ったこともありません。


文書作成料についても同じです。ケアマネジャーが作成する文書には、
・ケアプラン(※)
・経過記録
・アセスメントシート
・モニタリング表
・サービス担当者会議開催依頼
・ケアプラン作成のための意見照会
・住宅改修理由書(※)
・入院・入所時情報連携シート(※☆)
・福祉用具軽度者特例申請書(※)
といったものがあります。このうち、経過記録やアセスメントシート、モニタリングシートは単なる記録ですから良いとしても、※印のつけた文書はお客様(利用者)または役所、施設等に渡す文書です。
それなのに報酬はありません。


☆をつけた文書にのみ「加算」という形で報酬がありますが、あくまで加算であって、本体報酬の給付管理が行われなければタダ働きです(入院した月にサービス利用がなければもらえません)。
  
相談に乗ろうと、


ケアプランを作ろうと、
住宅改修の理由書を書こうと、
リハ会議に出席しようと、
ムンテラ(退院前カンファレンス)に出ようと、
入院・入所時の情報提供書を書こうと、
 


すべて「タダ」なのです。
 


弁護士や司法書士、行政書士といった、いわゆる「サムライ業」では、
・相談料
・文書作成料
・日当
は当然のごとく発生します。というより、それが商売です。


しかし、ケアマネには無い。同じように「相談に乗り、文書を作り、書類提出の代行をしている」のですから、
給付管理費だけでなく、


・ケアプラン作成料(文書料)
・担当者会議開催料
・相談料(初回加算あり。月2回以上加算あり)
・リハ会議出席料
・入院時連携情報作成料(文書料)
・ムンテラ出席料
・要介護認定申請代行料
・住宅改修理由書作成料(文書料)
・福祉用具軽度者特例文書作成料


が無いのはつくづくおかしいと思います。


そういっても、なぜかケアマネ業界では賛同は得られません。
ケアマネ業務に自己負担を導入するなら、それくらい報酬を細かく分けてもらえれば、もっと仕事に張り合いがでるのにな、と思うのですが…。
やってもやらなくても同じ報酬ではね…。


医療・福祉業界とまとめていえば、医者は文書料やら診察料やら治療費やら貰ってますよね。
同じだと思うんですけどね~。
 


つくづく介護業界はなめられていると言いますか、業界の意識が低すぎるといいますか。
 


介護業界の年収が労働者全体の平均より圧倒的に低い理由はこの辺りにもあるような気がする今日この頃です。

ケアマネ減少時代?

平成30年度の介護支援専門員実務研修受講試験、いわゆるケアマネ試験の実施状況が厚生労働省より発表され、今年度は、受験者数、合格者数、合格率ともに過去最低を記録したことが明らかとなりました。

ソースはこちら→http://u0u1.net/Oogu


昨年度までは「資格保持+実務経験5年以上」だった受験資格が、今年度より「国家資格保持+国家資格取得から5年以上」と変更されたので、受験者数減も合格者数減もある程度予想されていましたが、それにしても、


昨年度 合格者28,233人 ⇒ 今年度4,990人


と、ここまで減るとは予想外でした。


さて、こうなると、今後ケアマネは減少していくのか。という命題に直面するわけですが、果たしてどうなるのか、データをあれこれ見てみました。


まず、ケアマネ試験は20年間で70万人が合格しています。
そのうち、現在ケアマネとして働いている人は10万人です。
既に20年経っているので単純計算はできませんが、初期の合格者で現在も最前線で体を張っている方々はたくさんいらっしゃいますので、ざっと合格者の6人に1人が実際にケアマネとして勤務していると仮定します。


次に、ケアマネの年齢構成は、50歳以上33.7%、60歳以上15.7%となっています。
70歳定年時代に突入したと仮定しても、10年後には単純に15,700人減る計算になります。


一方で、現在の合格水準(年5,000人)を維持した場合、6人に1人が就業するとすると、毎年850人程度が就職するので、10年で8,500人増える計算になります。


そうすると、10年後には単純計算で、ケアマネが7,200人減ることになります。


合格者が少ないのだから、少数精鋭に違いない!やる気のある人たちだけに違いない!


と、期待すれば現状維持できますが、合格者の年齢層も従業者の年齢層と大差ないでしょうから、現状維持のためには少なくとも年2,000人は就業してもらわないとケアマネは減少することになります。


そうすると、現在の50代が70代になる20年後には…。




と、なりますが、20年後には、いわゆる団塊の世代が90歳以上になっているので、国の考えとしては<今後ケアマネジャーの絶対数が減少するとしても需要に対する供給量は満たされている>となるのかもしれません。
 
 
 
ただし、ここには、「こんなに締め付け厳しいならケアマネなんて辞めてやる!!」という人の数は含まれておりません。
お国や某協会の皆様方は、この辺りを甘く見ているとしっぺ返しをくらうかも。
 
 
と、思いつつ、社会福祉関連の職員は奉仕精神が濃厚なので、どうなんかな~、と思ったり(もしや国はそれも計算済みだったり?)
 
 
多分に漏れず、善意が食い物にされているこの業界です。
 
 
 
参考資料はこちら


平成27年実態調査
http://u0u1.net/OnQE


平成29年分科会資料
http://u0u1.net/OnR7


第20回試験実施状況
http://u0u1.net/OnSL

ただ働き・その1 ~申請代行、なぜ無料?

居宅介護支援専門員、通称「ケアマネジャー」は、ただ働きを求められることがよくあります。


その1は、要介護認定の申請代行です。


要介護認定の申請は、介護保険サービスを受けたいと思われた方が、区役所に行って行うことが原則ですが、本人が行けるとは限りませんので、当然のごとく他の人が「申請代行」することができます。


そうしますと、要介護認定の申請は介護保険法に基づく行為ですので、申請代行(または代理申請)できる人は、まず第一に社会保険労務士さん(社労士さん)です。


介護保険は公的社会保険の一つですので、社会保険のことなら社会保険労務士さんの業務独占!ということになるわけです。(社会保険労務士法第2条第1号の2)


実際に社労士さんが申請代行をされているのかはともかく、社労士さんに頼むのであれば、普通、一般の感覚では、「お金がかかる」はずです。お仕事ですから、タダではやらないでしょう。


と・こ・ろ・が


介護保険法は、要介護認定の申請について、指定居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)や、地域包括支援センターが代行できる、としています。(介護保険法第27条第1項)


これに基づいて、各地のケアマネさんは、利用者さんに頼まれると新規だろうと更新だろうと、いそいそと区役所に出かけて行って、代わりに申請をしてくるわけですが、


なぜか、これが無料です。


「ケアマネさんに頼むと無料です」とか書いちゃっている市町村まであります。


社労士さんに頼めば当然有料なのに、ケアマネに頼むと無料で、しかも、多くのケアマネはそれを疑問としていません。
国や市町村から報酬を貰えるんじゃないの?と思われた、そこのアナタ。


ケアマネはケアプランを作ってサービスが動き出さない限り、ビタ一文報酬を貰えません。ケアマネがもらえる報酬は、「給付管理費」という名目の、「各サービス事業者がお報酬を貰う(給付を受ける)ための手続き(管理)をした費用」しかないのです。


ケアプランを作っただけではもらえません。サービスを1回でも使ってもらわないとダメです。


ですので、


・介護保険サービスの利用について相談を受けた(1時間)
・ご自宅に行ってアセスメントをした(移動時間込みで1時間半)
・申請代行をした(1時間)
・アセスメント表やら相談受付票を作った(1時間)
・サービス事業所の見学に付き添った(2時間)
・実際に利用したいサービスが決まったので、ケアプランを作るために詳細なアセスメントを行った(2時間)
・頭を悩ませてケアプランを作った(2時間)
・サービス担当者会議を開催するための調整をした(30分)
・サービス担当者会議を開催した(1時間)


まで、やっておきながら、利用者さんが「やっぱりいいわ」と言った場合、 
 


ケアマネは無報酬です。
11時間がタダ働きです。
 


はっきり言ってバカです。
世の中広しといえども、こんなアホな商売をしているのはケアマネだけだと思います。


でも、多くのケアマネは疑問も抱かずに仕事をしています。
相談料、申請代行料。取っていいと思うんですがね~
お金を取るべきだ!なんていうと、ものすごい目で見られます。
まるで守銭奴のような扱いです。
社労士さんには平気でお金を払うであろう利用者さんにも、有料です、なんて言おうものなら「えっ!?」と言われます。下手するとケアマネ変えられます。
 


業界全体が阿呆なのが一番悪いですが、少なくとも、市町村が公然と「ケアマネは無料です」というのは反則です。
  
 
介護保険制度は、ケアマネの善意を食い物にしている制度だと、つくづく思います。
 


(続くかも)